ラストチャンス〜再生請負人〜に学ぶ!大手飲食フランチャイズが厳しくなる理由と直営店繁盛の予兆とは?

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2018年7月スタートのテレビ東京系ドラマ「ラストチャンス〜再生請負人〜」が好評のようです。

元銀行員の主人公・樫村が、とあるきっかけから外食チェーンのCFO(最高財務責任者)となり、その後、社内不祥事発覚による社長の辞任に伴い、一気にCEO(最高経営責任者)となって企業再生に挑むというストーリーです。

前期4月期のドラマ「ヘッドハンター」もそうでしたが、テレビ東京系のこの時間帯枠はドラマBizと称していることから見ても、綺麗事ではなく、ビジネス最先端の泥臭い実情を入念にリサーチして脚本化し、非常にリアリティ溢れるドラマに仕上げていることが垣間見れます。

 

飲食店経営はあらゆる業種業態の中でも最上位に位置する難易度

 

さて、今回のテーマは外食チェーン、つまり飲食店経営ということになります。

私は今から20年以上前の大学時代、実は焼き鳥居酒屋という飲食店経営に深く関わったことがあるため、心の底から実感しているのですが、飲食店経営はあらゆる業種業態の中でも最上位に位置する難易度だと思っています。

コスト意識をどれだけ持とうとしても、どうしても高額に膨れ上がるテナント料を含む初期費用。そしてそもそも高くなる食材原価率や高い人件費に加えて、売上には立地が非常にファクターとなります。

そして”ここでしか食べることができない、何か特別なメニュー”を生み出せるかに加えて、事業継続上最も大切なことは、周辺環境の変化を常に把握し、移りがちなお客様ニーズに答え続けていく、高い現場力です。

いくら料理が得意だからと言って、経営のイロハも学ばずに素人が安易に手を出すと、まず間違いなく失敗するビジネスの典型なのです。

 

業績不振の飲食店が惑わされる”フランチャイズ権販売”という錬金術

 

さて今回、主人公の樫村が挑む大手飲食フランチャイズ企業「デリシャス・フード」は、複数の外食ブランドを持つ外食チェーンです。フランチャイズ展開しているため、自社直営店と加盟店に分かれます。

ドラマの第2話で、主人公・樫村は十和田フードという飲食店経営で成功している企業のやり手経営者・岡田十和子に出会います。

特長あるメニューで繁盛店を作っている岡田は、フランチャイズはせず、直営店にこだわっています。その理由を樫村が問うと、岡田はこう言います。

 

「これはあくまで私の考え方なんですが、フランチャイズにすると一気に店数を増やすことができます。でも、それぞれの店に個性がなくなってしまいます。それではつまらないでしょう?お店は働く人が楽しく、創意工夫してくれないと繁盛してくれません」

 

つまり繁盛する飲食店経営には、まず大前提にお店の核となるコンセプトと創意工夫された特長あるメニュー(商品開発力)が必要です。そしてそれに加えて、店舗周辺の見込み客を観る目(マーケティング力)に店舗周辺環境の変化や競合との戦い方(経営戦略)に到るまで、経営者ご自身に高い経営センスが求められるのです。

ドラマの岡田は、かつて銀行員でしたが辞めて、ふぐ料理のお店で修行をして独立したという設定になっています。おそらくその現場経験の中で、飲食店経営とはオーナーの高い経営力が必要となることをいやというほど理解したのでしょう。

 

だから岡田は直営店に拘り、経営者として各店舗をしっかりとマネジメントし、過度な規模拡大をあえて慎んでいるのだと思います。加えて岡田は、フランチャイズビジネスの重要な問題点を指摘しています。

 

「それに・・・フランチャイズを資金繰りに利用したくなるんです」

 

この言葉の意味を、樫村の銀行員時代の同僚で、現在は経営コンサルタントの宮内は、こう解説しています。

 

銀行員時代の担当(顧客企業)にもあった。銀行が貸してくれないから、先のことを考えずにフランチャイズ権を売りまくる。だが、売るだけ売って、フランチャイザーとしての義務を果たさない。営業指導をしなかったり、売上予測を実際よりも高く見せていた。それで加盟店から訴訟を起こされて、結果は倒産・・・

 

まさにビジョンも何もない、ただの錬金術や詐欺行為としか言えない愚行に陥るわけです。

これはドラマの世界の話だろうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、どんな経営者であっても、順調であればそんな愚行はしません。それほど飲食店経営とは、本当に難しいということなのです。

 

飲食店経営においても非常に重要な、経営者としてのビジョン

 

ですが一方で、フランチャイズビジネスは現在25兆円市場と伸びています。これは、フランチャイジーとしてビジネスに挑戦したいオーナーというのはいまだに数多く存在するということです。

そして私は決してフランチャイズビジネスそのものがダメだとは言ってません。ダメだと断罪したいのは、ありたい姿、つまりビジョンなきフランチャイズ店の膨張拡大により、楽してボロ儲けしようとする二流経営者の性根です。

そもそも飲食フランチャイズの特長とは何でしょうか?全国一律で提供されるコスパの良い料理の価格と品質、そして何より全国的なブランドの浸透による食の安心ではないでしょうか?

歴史を遡れば、戦後、腹一杯食べられることだけを求めて必死に経済復興を目指していた当時の日本人の大多数にとって、またバブル崩壊以降、デフレ経済が長く続く中、一向に所得が増えない人々にとって、飲食フランチャイズが提供する全国一律で提供されるコスパの良い料理の価格と品質は、まさに救世主だったはずです。

そう、大手飲食フランチャイズ企業を一代で作り上げた創業者には、大なり小なり、そのようなビジョンがあったわけです。

そういった特長を持つフランチャイズチェーンは、高度経済成長期以降、主役となる企業やブランドは変われども、長く日本の成長産業として伸びてきました。

一方でその当時、街にあるいわゆる個人経営の飲食店というのは、知る人ぞ知る名店(もしくは逆)であるケースが多かったわけです。

その街に長く住む住人が、慣れ親しんだ安心して食べられる料理を変わらず提供するお店、それが街にある個人経営の飲食店の当時の姿だったわけです。

ですがどうしても、その街に引っ越して来たばかりの人や、たまたまその街に仕事や遊びで立ち寄った人にとって、安心して美味しく食べられるお店なのかどうかというと、彼らがそれを知る手段が限られていた(雑誌などの特集)ことがネックでした。

そのため、先に述べた全国展開している大手飲食フランチャイズ店の特長こそが、利用者の安心材料となって支持されてきたのだと思います。ですが今や、状況は逆転しつつあるように感じます。

 

繁盛する飲食店はこれから個人経営にシフトしていく

 

今や日本は世界でも有数の成熟国家です。そして日本の食文化は、世界的に見ても日本ほど食のクオリティが高い国はないと言っても過言ではないほどのレベルを誇ります。

そういう環境下において、大手飲食フランチャイズの全国一律の特長が弱いメニューに対する支持は、徐々に低下しているわけですが、おそらく原因は、二つあると考えられます。

まず一つは、少子高齢化による外食シーンの限定化・細分化です。フランチャイズ最盛期のように、ファミリー層をメインターゲットにした画一されたお店は衰退し、今は若いカップル、アラフォー夫婦、高齢夫婦といった顧客ペルソナごとにニーズは多様化しています。よって規模を強みとするフランチャイズ方式では厳しくなるわけです。

また近年のファミリー層は、健康志向やこだわり食材を重視する傾向も高まっています。仮にこだわり食材を使った飲食店で親子4〜5名が食事するとなると、たとえ外食ランチでもそこそこの支出になります。何かと子育てにお金がかかる世代では、総じて外食は控え、内食傾向に回帰せざるを得ないのです。

そしてもう一つは、スマホアプリによる飲食店情報の普及です。

例えば外出先でランチやディナーを、と思った場合、みなさんはどうされますか?おそらく無意識に、食べログやGoogleマップの飲食店情報などで、近くの飲食店情報を検索し、評価レビューをチェックされているはずです。今やネットでいくつかのサイトの飲食店情報を見れば、おおよそのことはわかる時代です。

そして実はこれが、個人飲食店の救世主となっているようです。評価の高いお店は繁盛店となり、評価の低いお店は閑散となり廃業していく。消費者が決める健全な市場のメカニズムにより、特長を出せる個人経営の飲食店の競争力は、以前と比べて増していくでしょう。

よって下手なフランチャイズ店よりも個人経営の飲食店の方が優位になる可能性も出てきたわけです。

とはいえ、冒頭でも申し上げましたが、飲食店経営というのは想像以上に難易度の高いビジネスです。簡単ではありません。よく経営者の方が趣味の延長線上で出店されたりしますが、簡単に手を出すことは避けられるべきだと思います。

飲食店経営においても大事なのは、目先の売上や儲けではなく、経営者のビジョン、つまり”ありたい姿”なのです。