経営コンサルタントとして常に大事にしていることは”経営者自身の人生をもきちんと観る”こと

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「先日ご紹介頂いたN社の事例、あれが経営改革の決め手でした。私の心にすごく刺さりました。悩んでいた私の心をクリアにしてくれました。おかげで最善の意思決定ができました。本当に感謝しています」

先日、半世紀以上続く不動産関連ビジネスの二代目経営者Tさんから、思いがけずこのような嬉しいお言葉を頂戴しました。

この経営者Tさん、不動産関連業界の将来を見通す力はかなり高いレベルで有しておられます。ですが事業承継される方の特有の悩みによって、なかなか経営改革の意思決定ができなかったようです。

そんな経営者Tさんの解決すべき悩みに対して、私がどのような事例をご紹介したかと言いますと、あるサービス業界の劇的環境変化に関する事例です。

この業界は中小規模のサービス企業が乱立するものの、競争環境は比較的激しくなかったわけですが、数年前に外資系IT企業のサービスが黒船のごとく到来。

これに危機感を感じた、業界でも老舗で有名な企業の3代目経営者Kさんが、過去のしがらみを断ち切り、経営体制を大胆に一新したという内容です。

たまたまTさんご自身が尊敬する経営者の一人でもあった経営者Kさんの事例だったこともありますが、そのKさんがどのようなプロセスを経て意思決定に至ったのか、そしてその会社が現在順調である事実を理解された結果、「あ、自分もやっていいんだ」と思えるようになったとおっしゃいました。

その後、数ヶ月を経てTさんとお会いした際に、冒頭の話をお聞きしたわけです。その表情は、前回お会いした際よりもスッキリしており、難しい意思決定を乗り越えて実行された経営者ならではの、自身に満ち溢れたものでもありました。

私がお付き合いさせて頂く中小企業経営者の方々は、素晴らしい問題解決能力をお持ちです。ですが、それゆえに考えすぎて意思決定ができない傾向もあります。

特に長く続く組織特有の問題に対し、解決策はイメージできており、解決後の組織成果まで見通せている場合がそれに当たります。赤の他人からすれば、本来やらない理由はないケースです。

ですがそれでもなかなか着手できない。まさに「わかっちゃいるけど、できない」というのが、何代も続く組織の現トップの心模様なのです。これは当事者にしかわからない心情だと思います。

そういう経営者の方に対し、一歩前に進んで頂くためのきっかけづくりこそ、我々の役割なのです。私が考える経営コンサルタントとは、まさにこのような経営者の背中を、適切なタイミングで、適切な押し具合で押させて頂き、成果に繋げて頂くのが役割なのです。

そのためには膨大な事例も重要です。それも表面的な話ではなく、泥臭くて生々しい情報をきちんと収集し、その内容を経営者の悩みに応じて的確にお伝えすることがより重要です。

ですが最も大事なこと、それは、クライアントである経営者の人生をしっかりと観ることです。

経営者も一人の人間です。一度しかない限りある人生を歩んでいるのです。

今回のケースでも、単に事例を紹介するだけではなく、現状のまま苦悩を続ける人生と、現状を打破する際のリスクを受容して次のステージで業容拡大を図る人生。どちらがご本人の”ありたい姿”かどうかを丁寧に確認することが大切です。

経営コンサルタントといえば、経営戦略のフレームワークを熟知し、ファイナンスと会計知識を有し、マーケティングを語る存在と思われているかもしれません。ですがそれらは、ある意味で誰でもできる内容です。

わざわざ経営コンサルタントなどという肩書きの人間に依頼する内容ではありません。本屋やアマゾンで経営書を購入し、熟読すれば大半の人は語れます。

それよりも本当に大切なことは、この”経営者ご自身のありたい姿を設計する”という上流工程の部分だと思っています。

逆に言えば、この上流工程を正しく設計することができるとそれ以降の工程はある程度、型に沿った形で作り上げていくことは可能なのです。

我々コンサルタントはそのことを常に忘れず、謙虚に”生々しい経営のリアル”に関する事例を吸収し、学びを深める必要があります。

そしてクライアント経営者のお悩みを正しく理解し、解決すべき悩みの本質を正しく見定め、伝えるべき内容を適切にお伝えしていくことを心がけなければならないと思っています。