中小企業の経営力とは経営者の状況対応力である

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私がかつて深く関わり、いまだに尊敬する地方の中小企業経営者の言葉なのですが、今も心に深く残っているものがあります。それは中小企業の経営力とは、経営者の状況対応力である」ということです。

 

50年間、経営して生き残ってきたことの重み

この方は、裸一貫で起業して以来半世紀近く、地方で会社経営してこられました。半世紀の会社経営において、何度も何度も、倒産の危機を乗り越えてきたそうです。

その間には、環境の劇的変化、社員の離反、取引先からの圧力、家庭のことなど、様々な試練があったそうです。そしてこれからお伝えするのは、私が経営に関して悩むことが多かった時期に、ご相談した際のやり取りです。

 

常に乗り越えることを自覚せざるを得ない、経営の現実

「〇〇さんはなぜ、ここまで会社が倒産することなく、乗り越えられたと思われますか?」私がサラッと問うと、一瞬で顔色が変わり、不快な表情をされたのを今でも昨日のことのように覚えています。

まだまだ会社経営というものが分かっていなかった私です。まだどこか、他人事に過ぎない心模様を、瞬時に読み取られたような感じがして、自らの軽い質問を恥じたものです。

その方は、諭すように語って下さいました。「そもそも経営者という生き物には、なぜ乗り越えられたか?という発想をすること自体がないんだよ。常に、乗り越える!という強い気持ちを持って日々を過ごしてきただけなんだ。それが心の中での通常運転。それと今、この瞬間を切り取って、結果の是非を論じても意味はないんだ。なぜなら、経営は現在進行形。私には経営者として、現在進行中の未来があるわけだから。だから私が、なぜ乗り越えられたのか?と聞かれて答えられる可能性があるとすれば、おそらく今際の際だと思う」

つまり、過去を振り返る余裕があるくらいなら、失敗を糧に次の成功に向けたアクションを取り続ける事が経営者なのだというわけです。

これが人や組織に依存しているサラリーマン・マインドであれば、モチベーションダウンなどという症状が付きまとうところですが、そもそもが自律している真の経営者のマインドには、モチベーションという言葉は皆無のようです。

続いて、経営者が意識し続けるべき視座のあり方について、語って下さいました。

「それまでは諦めずに、ただひたすら状況に即応して、対応したり適応していくことだ。目先のことに対し、常に気を抜かず、気を配る。それはとても泥臭いことの連続だ。そしておそらく、意思決定においては失敗することが実に多い。だが失敗を恐れて、先延ばししてはいけない。大事なのは即断即決だ。目の前の現実を常に受け入れ、リアリティを第一に、死に物狂いで考え、短期間で自らがたどり着いた最善解をどんどん実行していくことだ」

「ですが経営者としては、目の前のことばかりでもダメですよね?」私は質問しました。

「その通り。目先のことばかりに囚われていては、当然ながらダメだ。どんな事業も、いずれは行き詰まる。だから先々のことを考え続けることは、経営者として当然のことだ。特に厳しい経営環境の時ほど、経営者はより高い視座から、より遠くを見ることだね」

「そのために大切なことは、何ですか?」

「それは、ビジョンだ。これを成し遂げたいと心から思えるビジョンがあるから、どんなに苦しくても、経営者は試練を乗り越えようと思えるんだ。そして何としてもビジョンを実現したいから、四六時中、この二つ(目先のことと、先々のこと)を行ったり来たりして考え続けるわけだよ。だから経営者であれば、心穏やかにできる瞬間など、ありはしない

 

経営において「わかる」と「できる」の差は想像以上に大きい

そして最後に、こう付け加えられました。

「今まで話してきた内容は、当たり前のことが多いと思う。本屋に行けば、経営書などにもきっと書いてあるだろうね。でもね、「わかる」と「できる」は違うからね。ここが大事だ。経営していて、日々発生する様々な出来事に逃げずに向き合い続けて、より良い成果が出せる経営者になっていくことが、最も大事なんだ。もしそんな根気強さを求められることが嫌ならば、人に雇われる生き方を選択すべきだ。経営者に比べて責任は軽いが、それも立派な生き方だからね。君には経営者としての覚悟はあるかな?」

これは今でも、私の実践的経営における原点ともいうべき、金言です。「わかる」と「できる」というのは、本当に言葉にすると少しの違いだと思いがちですが、天と地ほどの違いがあると思います。

特に経営コンサルタントという仕事は、企業経営に対して素晴らしい成果を出せる方もいらっしゃる一方で、口先だけ、もしくは理論や受け売りの知識ばかりをひけらかす方もいらっしゃいます。

中小企業経営には常に、行動から学び続ける姿勢が求められます。そしt成果を出し続けなければならない宿命があります。経営コンサルタントとしてこれらの言葉を常に意識し、中小企業経営者の方々と向き合おうと心がけています。