経営者が事業の強みを見誤ってしまうと、会社全体が長い苦悩に陥ってしまう理由とは?

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先日、とある女性経営者の長い苦悩をお聞きしました。この方は非常に華やかで美しい外見をお持ちなのですが、一方で性格は非常に真面目な方です。

数年前に起業し、初期の事業化で非常に苦しんだようです。そういう状況下で、やがて起業の際の理想を捨て、目先の売上アップのために、自らの外見的特徴を前面に出したプロモーション戦略に舵を切り替えたそうです。

SNSなどでの集客にも成功し、事業の組織化も上手くいき始め、結果として現在はかなりのリピーターに恵まれているそうです。

ですが最近、悩まれていること。それは購入率の低いリピーター(つまり単なる外見的特徴が好きなだけのファン層)への対処法と、新規顧客の伸び悩み、のようです。

こういった事例は、SNSが普及して以降、実は結構増えている「過度な露出や演出によるセルフブランディングが、逆効果となったケース」としてよくお聞きするお悩みでもあります。

スタートアップであれ、スモールビジネスであれ、起業家の多くは何かのビジョン、つまり”ありたい姿”をイメージして起業します。その後、当初の想定通りに順調に行けば良いのですが、大半はそう上手くいきません。

「掲げた理想は高くとも、現実は厳しい」という状況に追い込まれます。そしてその時、大半の経営者がやってしまうこと。それは「背に腹はかえられぬ」との思いから、場当たり的で現実的すぎる施策を連発し過ぎることです。

具体的には、サイトの過剰なコピーや見栄を張っただけのビジュアル、またSNS活用による過激な炎上商法・・・などです。

そうすれば、多少は注目度が上がります。よって少しずつ売上があります。斬新な切り口であれば、ネタ探しに必死の週刊誌やメディアなどが食いついてきます。

その結果は・・・起業時のビジョンなどは遥か彼方に置き去り、常に現実と目先の売上・利益だけに走る経営者に陥ってしまうわけです。

さて、こういうスタイルの経営を続け、目先の売上・利益がそこそこ結果としてついてきた経営者は、どうなるでしょうか?

最初はまず間違いなく満足します。創業期の苦しい数年間の反動というのでしょうか。マイナスまで落ち切っていた承認欲求が、プラスマイナスゼロのところまで満たされるからです。

このプラスマイナスゼロまでというところがポイントです。冷静に考えるとスタートラインに戻っただけなので満足してはいけない位置なのですが、おそらく節約ばかりの毎日に、社員の離反、取引先との交渉劣位、そして全ての業務に共通する資金の問題・・・

こういったことを”一応”乗り越えたとするならば、息抜きをしたくなるのが人間です。そのため、ここで散財してしまいがちです。

さて、このスタイルで年商数十億規模となった男性起業家A氏に、以前お会いした時の話です。

第一印象は、失礼を承知で申し上げると、成金そのもの。話を聞くと、初めてお会いした時の都心の一等地に住み、外車やブランド品を数多く所有・・・などなど、典型的な成り上がり経営者でした。

ですが、話しているうちに、何か満ち足りていない、苦悩の表情が垣間見れます。そこで少し間を置いて、二度目にお会いしました。

「・・・実は今の事業って、たまたまヒットした事業なんですよね。だから正直、やりたいことではないんです。本当に興味ないんです。でも流石にここまで大きくなってしまうと、やめるにやめられない・・・」

それに対し、私は「だったら事業自体を誰かに任せるとか、事業売却するとか、選択肢はいくらでもありますよね?」と申し上げました。

すると、「いや、すでに私には、この事業のカラーがついているんですよね。元々やりたかった事業とは正反対のカラーです。正直、そのついてしまったカラーから抜け出せないですよ。もう私はこれから、このやりたくない事業のイメージカラーを背負って生きていくんでしょうね・・・」

具体的には控えさせて頂きますが、A氏の本来やりたかった事業といのは、かなりイメージが重要だったのです。でも、目先の売上欲しさに、ビジョンやありたい姿とは全く異なる、金儲けのための事業に手を出した結果、成功したものの失ったものも大きいようでした。

現在A氏は必死で、ついてしまったカラーから脱却しようと奮闘していますが、苦悩はまだまだ続きそうな様子です。

やはり起業家には、世の中をどうしたいのか、世の中にどういう価値を創出したいのか、世の中をどのようによくしたいのかといったビジョン・ミッションが重要なのです。

そしてその根底には、ご自身がやりたい事、ありたい姿をきちんと軸に持つことが何より重要となります。そして苦しい時ほど、このビジョン・ミッションを見失うことなく、中長期的視点で事を成す姿勢が大切なのです。

そうしないと、仮に他人が羨むような金銭的成功や社会的成功を収めたとしても、ご本人の本当に求めていた欲求は何ら満たされることなく、長い苦悩が続くだけなのです。