歯車の噛み合った強靭な中小企業の社員は生活の安定を感じるため離職が少ない

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「実は最近、社員の離職が続き、業務に支障が出始めています。何か良い打ち手はないものかと悩んでいます・・」

以前、世間的には好調なイメージを持たれている、ある中小企業の役員から、このようなご相談を頂きました。私からはこうアドバイスさせて頂きました。

「社長の考えと社員のみなさんの考えは、歯車としてしっかり噛み合っていますか?」

 

慢性的な採用の売り手市場がもたらす中小企業の現実

ここ数年、アベノミクス効果なのかどうかはさておき、安定した景気を背景として、採用における売り手市場が長く続いているようです。先日、人材エージェント会社の社長とお会いしたのですが、「将来性のある有望なベンチャー企業は数多くあるのですが、そこにご紹介したいと思える人材の供給数が圧倒的に不足しています・・・」と嘆いていらっしゃいました。

先日の新聞には直近の有効求人倍率が1.52倍とありました。この数値は、あのバブル経済の頃の数値(1.46倍)よりも高いとのことです。

実感はないというのが世間の大半の声のようですが、客観的指標としてみれば人手不足の影響はやはり大きいようです。

言うまでもなく日本はすでに少子高齢化社会から、少子社会、高齢社会へ移行しています。移民を受け入れることがない限り、これから少なくとも半世紀は、人口減少社会になることが確定しています。

よってまともなスキルを持つ社員は、採用売り手市場の中でより条件の良い企業に転職できる機会が年々増えていくことが想定されます。経営者としては、実に頭の痛い話ですが、これが現実なのです。

 

中小企業の社員が本音で望んでいること

社員が離職しようと決断する要因は、色々あります。給与、業務量、ポジション、役割、やりがい、人間関係、プライベートなどなど、数え上げればきりがありませんが、経営者が最も見過ごしがちなのが、社長と社員の間で歯車が噛み合い、社員の心に正しい安心感を醸成できているかどうか、ということです。

というのも、経営者を支えながら日夜奮闘してくれる社員という立場で働く人々が望む重要なことが、生活の安定です。

もちろん、やりがいやスキルアップなどを第一に求める人もいます。ですが、それは圧倒的知名度のある大企業や急成長中のベンチャー企業で働く社員に見られる傾向です。

メディアに取り上げられるため勘違いしがちですが、日本の企業全体からすれば、今はまだ、かなり特殊なのです。

リアルな中小企業の現場で働く社員の心理は、もっと切実です。自分の会社のトップ(経営者)がどれだけ長い期間、社員である自ら(とその家族)の生活に安定を生み出してくれるのかが重要です。

だから社員という立場を選んだのです。よって長期にわたり、しっかりとした経営をしてくれる会社かどうかが、見極めのポイントとなります。

この点に関して、昔は知人が働いている会社でもなければ、実際に会社へ入ってみなければわからないことが多かったわけですが、ここ10年のネット社会の加速、特にソーシャルメディアが普及したことにより、入社前の立場でも実際に社内で働く社員のソーシャルメディア上でのコメントや、転職サイト上での匿名コメントなどを元に会社の実情を知ることができるようになりました。

冒頭にご紹介した役員の企業では、毎月数人が入社し、概ね同数の人が退社しているという話でした。この会社は、経営者と社員の歯車が全く噛み合っていないため、このような悲惨な状況なのです。

そういう会社は離職者をどんどん生み出し、それが追加採用によるコスト増や社員の習熟度不足を生み、組織の仕組み化が遅れます。そうすると、商品やサービスの質は低下し、ひいては業績悪化を招く。そのため社員が生活の安定を感じられなくなり、さらに離職・・・という負のスパイラルに陥るわけです。

 

仕組みで廻る組織と社員の安心感で採用は好転する

では根本的に何が問題なのでしょうか?会社に長期的視点に基づく仕組み作りの意識が欠けていることです。生活の安定を望む社員にとって、会社経営は自分で制御できないことです。制御できるのは、基本的に経営者である社長だけです。

とすれば、社員は経営者である社長の言動や行動を観察し、この会社で働き続ければ、自分の生活の安定を得られるかどうか?を判断するしかないわけです。

そして生活の安定を社員に感じさせられるからこそ、経営者は社員に対し、ハードルの高い過酷な仕事を求めることができ、社員はその期待に必死になって応えようと頑張るわけです。こうして会社に、経営者と社員の歯車がかみ合った状態が出来上がり、それはやがて組織としての仕組みに繋がっていくわけです。

よってまずは安心感を感じさせる。その上で厳しく指導し、必死に頑張ってもらい、成果を出してもらう。この順番で、愚直に仕組みで廻せる強い組織を作ろうとする経営者のいる中小企業こそが、人口減少社会においても安定して良い人材に恵まれ続けるのです。

そして、このことをどれだけ経営者として正しく認識して経営できているかどうかが、競争力のある中小企業と、そうでない中小企業との差に現れてくるのだと思います。

 

御社は、まず社員に生活の安定を感じさせていますか?