中小企業の生産性を向上し、企業としてステージアップするために必要となる、現実的な組織づくりとは

投稿日:

「今期は挑戦的な予算設定なのですが、達成に向けて売上を引き上げるため、期初から社員の数を増やしました。ですが半年経ってもなかなか効果が現れません。このままでは予算未達となりそうで、正直焦っています。どのように対策を講じればよいのでしょうか?」

 

なぜ中小企業では、思うように生産性が向上しないのか?

予算達成に向けて、営業担当を増員したが、思ったように売り上げが伸びず、生産性向上の壁にぶつかるといったケースは、よくお聞きします。特に中小企業の経営では、予算の未達度が大きすぎると、資金繰りなどへの影響も考えられ、中には黒字倒産リスクに繋がるケースもありますから、事態は想像以上に深刻なケースもあります。

以前、経営執行していた会社でも、半年をすぎたあたりから毎月末になると私は予実管理表を見ながら、自社の限られたリソースの中で実現可能なあらゆる打ち手を模索し、社長に意見具申したものです。では、そもそも中小企業が抱える生産性が向上しない根本原因には、どういうことが考えられるのでしょうか?

今回は、創業10年前後で既存顧客が定着し始め、社員もある程度の規模(20人から100人くらい)となり、これからビジネスモデルを固めて株式公開(IPO)なども視野に検討していきたいステージに差し掛かったベンチャー・中小企業でよくある事例について、お伝えしたいと思います。

 

中小企業における「生産性低迷」による経営へのダメージ

このタイプの中小企業によくある傾向が、創業時からの前例踏襲を引きずるパターンです。具体的には、創業時の属人的な業務プロセスをそのまま引きずりながら、社員数を増やし、その業務プロセスをそのままOJTで拡大再生産しているパターンです。

これは会社の次のステージにおける生産性に、極めて悪影響を及ぼします。というのも、創業時というのは、ヒト・モノ・カネともに極めて不足している時期です。

その時期に構築された、いわば創業期を生き残るためのガムシャラな業務プロセスは、創業期を支えてくれる社員の高い当事者意識や長時間労働をも厭わない不断の努力により、サバイバルする過程で出来上がった産物であることが多いわけです。

これを拡大期に入社した社員にそのまま当てはめてしまうと、どうなるでしょうか?拡大期の社員というのは、会社がある程度社会的認知度を持つようになったために、「この会社ならば(収入・やりがい・経験などの面で)将来性は高い。上場も視野に入れているみたいだから、挑戦しがいがあるぞ」と思って入ってくるケースが多くなります。

さて、そういう社員がいざ会社に入ってみて、属人的なプロセスで疲れ果てている創業期からの社員を目の前にした場合、どう思うでしょうか?

ベンチャー・中小企業だから、そういうものだと思ってもらわないとダメだという経営者の声が聞こえてきますが、それは本当に正しいのでしょうか?

仮にそういう考え方で、属人的な業務プロセスの環境下に、創業期を知らない拡大期に入社希望した社員を採用したとします。すると、まず創業期からの社員と拡大期から入った社員との間で、いさかいが生じます。

創業期からの社員は、経営者とともに仕事最優先、場合によってはプライベートを犠牲にして、会社の成長にフルコミットしています。

一方で拡大期の社員は、ある程度予想はしていたとは思うものの、過去を知らないだけに、戸惑いの連続となります。これは、世間でよく言われている、この社員が単にベンチャー・中小企業で働くということがわかっていない、覚悟がないといった話ではありません。

単に創業期からの修羅場を経験していないがゆえに生じる、戸惑いなのです。そのため、この創業期からの社員と拡大期から入った社員の混じり合いを想定した組織づくりと人事戦略を、経営者があらかじめ考えておかなければ、売上拡大とは直接関係しない、社内における人間関係の余計な問題が一気に増殖します。

特に問題となるのが、創業期から支えてきてくれた社員の精神的な緊張感が急に解かれてしまうケースです。具体的には、「これまでガムシャラに走ってきたけど、最近入った社員があの程度の働き方で許されるなら、私も少し手を抜こうかな?」という類のケースです。

これは、経営者にとっては極めて深刻な兆候です。結果、社員数は増えたものの、生産性は低下し、ひいては固定費増、売上停滞による利益の圧迫要因に繋がってしまうのです。

 

中小企業が生産性を高めるために必要な戦略とは?

それでは拡大期に差し掛かる組織において、中小企業経営者は具体的にどのような組織づくりを実践すべきなのでしょうか?

私は経験上、属人的な業務プロセスを、拡大期に入社してくる社員の誰もが理解し、業務として取り組める仕組みのプロセスへと地道に移行していくしかないと考えます。

これは非常に手間のかかる、いわば組織の再構築プロジェクトです。ですが、このプロジェクトの要諦をしっかりと理解し、地道に組織から属人性を排除し、仕組みで廻る組織を作り上げた企業は、確実に業績の向上が見込めます。

前期比何パーセントの売上増という数値的なインパクト以上に、社内外の関係者の印象がガラリと変わる、いわば企業としてのステージアップを実感できるレベルになるわけです。

そして当コンサルティングの主たるミッションは、まさにこのステージアップに貢献することにあります。

 

生産性を高める現実的な組織づくりの事例

では最後に、具体的な事例の一つをご紹介したいと思います。ある企業の拡大期の組織づくりにおける、人事に関する一つの事例です。この企業には、それまで人事部がありませんでした。それまで管理部門(経理・財務・人事・総務)が一つの部であり、人事の役割とは労務管理と給与関係だったわけです。

ですが、拡大期に伴い、外部から経験豊富なマネジメント人材を採用する必要性に迫られていました。しかしながら、受け入れる側の管理部門に、採用対象者とまともにコミュニケーションできる人材がいませんでした。そこで考えたことは、創業期からの社員の中に埋もれている、人事に興味がある社員の抜擢登用でした。

ちょうどその頃から、四半期ごとに役職者と一般社員との定期的な面接を開始していたわけですが、その場で役職者に対し、社員のキャリアに対する考えをじっくり聴くことを伝えていました。

その結果、マーケティング部門の若くて優秀な社員が、人事希望であることが判明したのです。普通に考えれば、創業期から組織を支えてくれていた、優秀なマーケティング部門の人材ですから、異動はあり得ないと見送るところでしょう。

ですが、この会社は違いました。この会社にはビジョンがあり、次のステージを見据えていました。そのため、目先のマイナスにとらわれず、仕組みで廻る組織を作るという社長の意思決定があったわけです。

この社員は人事に異動しました。その結果、2つの相乗効果が生まれました。まず一つ目は、人事に異動した人事としてど素人の社員は、猛烈に人事総務の役割を学び始めました。上司に言われたからではなく、あくまで本人の内発的な動機によるものでした。元々、人事希望だったことが嘘ではなく、本心であったことが証明された瞬間でした。

加えて、元々マーケティング部門で活躍していた逸材です。会社の事業を理解し、お客様をよく理解していましたので、単なる管理業務としての人事の役割ではなく、顧客志向の組織づくりのための人事へと、人事機能のレベルアップを促進してくれたわけです。こうしてこの社員はあっという間に実績を積み重ね、経営陣の評価も一気に高まり、結果、会社で最年少のマネージャーに昇格していくことになります。

一方、この社員が抜けたマーケティング部門はどうなったでしょうか?大きな穴が抜けたわけですが、結論としてマイナスはなかったわけです。なぜかといえば、創業期から活躍してくれた優秀な社員が異動で抜けたからこそ、その社員に紐づいていた属人的な業務プロセスを見直すきっかけが生じたわけです。

これを機に、業務の棚卸紙を実施し、拡大期の社員の入社に伴い、適切に業務の引き継ぎを実施した結果、マイナスどころか新たな社員の経験やスキルを活かせる組織にレベルアップし、売上成長に繋がっていったわけです。

このプロセスを組織全体で実践することが、各組織のレベルアップを生み出し、ひいては企業としてのステージアップに繋がるわけです。

 

御社では、局所的な生産性向上ではなく、地道な企業としてのステージアップを意識した取り組みを実践されていますか?