仕組みで廻る会社の経営者が、方針を確実に社員へ伝えるために取り組むシンプルな習慣

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「実は、社員の理解度不足に悩んでいます。私の方針や考えをちゃんと理解せず、いつもミスばかりです。外部研修なども受講させてスキルアップさせようとしていますが、効果が出ていません。どうすればよいのでしょうか?」

自らの考えがなかなか社員に伝わらないという、経営者と社員との間のコミュニケーションにおける悩みは、実に多く存在します。近年、社員のモチベーション向上や定着率向上をテーマにした著書が、数多く出版されていますし、また大企業を中心に、社員向けのスキルアップや啓発系の研修サービスも活況です。

ではこういった取り組みは、中小企業の現場における人材育成、ひいては中小企業経営の業績向上において、本当に役立つのでしょうか?

 

先走る経営者、置いていかれる社員

志や熱意のある中小企業の経営者は、創業もしくは事業を承継されて以来、常にトップスピードで走っておられます。平日はお客様への訪問と現場のマネジメントに、金融機関などステークホルダーとの打合せなど、まともに経営をなさっている経営者ほど、多忙を極めます。

そうなるとどうしても、熟考すべき事案、例えば方針の策定、中長期の経営計画、取引先に関する重大事項の対処法、人事など、経営者としての仕事を検討されるのは、週末に一人で実施されることが多くなります。

例えば当コンサルティングのクライアントである経営者の方でも、ご相談のメールを頂戴するのは、週末に集中します。よってどうしてもご自身一人でどんどん先走って考えて結論を出し、週明けに役員へ先に話した上で、社員に“結論部分”だけを指示される傾向になりがちです。忙しい中小企業の現場のタイムスケジュールを考えると、どうしてもそうなりがちです。

そうすると、どうなるでしょうか?経営者が悩み、考え尽くしたプロセスを全く理解していない社員の立場からすれば、いきなり結論だけを聞かされても、正直ついていけません。話がよく理解できないのです。

人間、理解できないことをポンと伝えられ、それがどんどん進むと、よくわからない不安に取り憑かれます。結果、何となく「社長が暴走している」という印象を持ってしまい、距離ができてしまうのです。

ところが社長からすれば、「・・・なぜ、俺の言うことがわからないのだ?俺は考え尽くしている。今のままではダメなことくらい、うちで働いている社員なんだからわかるだろう・・・」と思ってしまうわけです。

そのうちに経営者は社員の理解度不足が原因と安易に考え、結果、外部研修などでのスキルアップに期待するというわけです。

 

本当に問題なのは、理解力不足ではない

私の考えはこうです。外部研修が社員教育に有効なのは、「当該社員の役割アップに伴い、その役割に求められる考え方を学ぶ必要がある場合」と「極めて専門性の高いスキルを習熟させる必要がある場合」です。経営者の考えを社員が理解するのに、外部研修はそれほど有効に活用できないのです。

では何が問題か。要は経営者の説明が不十分で、伝わっていないことに尽きます。経営者も人間です。自分が考え尽くしたことを、理路整然と説明できる方ばかりではありません。

どうしても、間を端折ったり、理屈よりも感情や感覚で伝えることもあるでしょう。これらは致し方ないことです。大切なのは、どれくらい伝え続けているか、の部分です。

 

相手に伝わるまでしっかり伝え続けることで本当に伝わる

つまり、高いプレゼンテーション能力で伝える1回よりも、ヘタでも熱意を持って伝え続ける100回の方が、格段に効果があるということです。実にシンプルな結論ですが、結局、回数が重要なのです。

社員に伝わっていないと嘆かれる経営者の方に多いのは、1回か2回話しただけで、「社員にはちゃんと説明したんだが・・・」と嘆かれる方が多いことです。

現実問題として、1、2回の説明で、経営者の意図が理解できる社員は、ほとんどいないと思った方が良いと思います。

考えてみてください。ご家族や親しい知人・友人であっても、あなたの考えを1回聞いただけで理解できる人は、稀なはずです。ましてや、社員とはいえ、生まれも育ちも異なる人々の集まりです。簡単に伝わると考えるほうが、そもそも間違いなのです。

コミュニケーションは受け手である相手が決めます。たとえ経営者であっても、社員(相手)に伝わっていないことを、相手のせいにしてはなりません。ましてや自らの考えや方針を、自分の会社で実現してくれる仲間でもある社員に伝えるという大切な仕事です。相手の立場に立って、しっかり伝わるための努力が重要です。

そして、老若男女や経験の深浅といったバイアスを排除し、一人一人丁寧に伝え尽くすことです。中小企業の場合、経営者が努力すれば、全社員一人一人に伝える時間が確保できるのが、大企業と比べた際のメリットです。

しっかり伝え尽くす努力をすれば、社員はその姿から、少しずつ行動を変容してくれます。そしてこれこそが、仕組みで廻る組織に共通する、非常に重要な要素でもあるわけです。そういう意図から、当コンサルティングでは、各回にコミュニケーションに関するキーワードを数多く散りばめています。

 

御社では、経営者として、社員一人一人としっかり対話していますか?